やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 原作8巻 感想


イラスト集は別に要らないや〜ということで通常版を購入。

  • 前置き

八幡がこれまで採ってきたやり方は
“自分の評価はマイナス方向にカンストしていて周囲からの扱いはこれ以上下がらない”
という前提に立っており、自己犠牲的だったり自虐的であるように見えても自分への実質的なダメージは最小限で済むやり方を選択肢に入れながら、他者へのダメージが最小限で済むというやり方を模索していく、というものだ。
『それだと自分の心が傷付くじゃないか』
という向きもあるだろうけど、それは八幡が傷付くと言っているのではなくそう感じてしまうご本人が傷付いているというだけの話だ。
“自分は主人公になれない”という現実は動きようが無い、と理解できてしまうような人間であれば、望んだ結果を導き出せるのなら誰かに対して下手に出たり泥をかぶったりするのなんてなんとも感じない。こんなのはそれこそお笑いのボケ役からドラマの名脇役に至るまで大なり小なり垣間見える精神だろう。
というのを7巻でもやった結果、そもそも雪ノ下&由比ヶ浜から想いを寄せられてて“自分は主人公になれない”という現実が崩れている状態だったため、彼女達をやたらと傷付けてしまったというわけだ。
では今後は……といえば“自分は主人公になれない”という自分の中で確定させてしまった現実に対して疑いを持って現時点の自分と照らし合わせられるか、誤りだという結論に至れるか、そしてどう再設定していくかといったポイントが見どころになってくるのだろう。
当然、八幡が葉山みたいな“大多数の人間の主人公になれる”になれるだなんて思ってないし望んでもいない。かといって“選んだヒロインだけの主人公になる”なんてのもありきたりだ。
今までずっとイタい目に遭ってきながら現実と折り合いを付けてきながらも、心の中では自分を曲げないで、考えることを止めなかった八幡の人間性が伝わってくるような八幡の現実ってのを楽しみにしながらの8巻である。

  • 本編

『自分が選んだ選択肢への後悔は無い』と周りに吹聴していることでお馴染みの私そのまんまな一節から始まる本巻。
相模の一件があったせいで『新登場のゲストキャラは使い捨てる』みたいな認識だったけど、今回のゲストキャラの一色いろはは人間関係的にも八幡に近い上に腹黒ながらもだいぶ懐いてるから川なんとかさんと違って修羅場レース参戦濃厚なのでは…?
……というのはあくまで時間の流れを進めるための道具に過ぎないのがこの作品。
この巻のメインはといえば、自分というものを一度定義してしまってそれに即した振る舞いをしながらもそこで思考停止に陥らずに互いに化学反応を起こし合ってもがき苦しむ高校生達と、それを知った上で手助けしてるんだかしてないんだかという陽乃、といったところ。
我らが八幡においても小町のお願いという建前を得ながら『修学旅行のアレはどうやら良くなかったようだから改めよう』とナイスな一手を指そうとしたものの、雪ノ下のトラウマに踏み込めずに情報が欠けてしまっているせいで的外れに終わった模様。
どのキャラにも言えることながら、ここまで来てしまったら、先に進むにはどころか現状維持するためにもリスキーな一歩を踏み込んでみなきゃいけないのかも。
それは陽乃の茶々であっさり踏み越えられるようなものであるとは思うんだけど、ここは今回雪ノ下達のことを慮って歩み寄った八幡に応える形で今度は雪ノ下が、身内から嫌われるということ極端に嫌うらしい彼女の方から歩み寄ってきてくれる展開になって欲しい。なんなら八幡と仲良くしたそうにしてる葉山との抱合せでもいい。
あーしさんを始めとして周りの人間関係もざわついてきたし、早くも次巻が待ち遠しい。